有元利夫 展覧会図録

 この本は、札幌芸術の森美術館で6月4日~7月3日に開催された「有元利夫 10年の絵と譜」展の展覧会図録である。

 画家有元利夫は1985年に38歳という若さでこの世を去った。画壇を席巻したのはたったの10年間であったが、タブローだけでなく、彫刻、版画、音楽まで、たくさんの作品をのこし、今も人々を魅了し続けている。
 この図録をつくる上で、担当の学芸員の方がもっともこだわったのは、質感だった。有元利夫は、時間が経過することによって現れる美を作り出すことに心を砕いた画家だ。風化し、剥がれ落ちたような画肌を、図録でも表現したいと考えた。

作品の画肌が伝わる柔らかな質感の本文紙 本文紙にはパールソフトを使用した。柔らかい白色で、ややがさがさとした質感がある。表紙はタントセレクト<TS-1>。剥がれ落ちたような質感を出すのにぴったりだった。絵柄はごくシンプルに、濃い茶色の箔押しで作家の名前を、その上から金の箔で、代表作≪花降る日≫に描かれた舞い散る花びらと、天から差す光をあしらった。

 有元利夫を愛する人が、またこの展示で初めて有元利夫に出合った人が、本棚に並べ、宝物のように、大切にしてくれることを願っている。(H)

※展覧会は2017年4月1日~5月14日にパラミタミュージアム(三重県)にも巡回