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 第20回東京国際ブックフェアが、2013年7月3日(水)~6日(土)の日程で開催されました。17回目の国際電子出版EXPOと3回目のライセシング・ジャパン、2回目のクリエイターEXPO東京に、プロダクションEXPO東京とコンテンツ制作・配信ソリューション展が新たに加わり、過去最高の1,360社の出展を数え、大変な賑わいを見せていました。

本展は、来場者である<書店・小売店/取次会社/出版業界関係者/学校・図書館/専門家・法人ユーザ/一般読者>と、出展者である<出版社/新聞社/取次会社/印刷会社/出版・流通関連業者>が「商談(仕入れ・注文/著作権の取引/サービスの導入)」と「購入(割引価格で)」をするための展示会です。

圧倒的な展示量と幅の広さであり、またどの立場で臨むかで把え方は異なるかもしれません。報告の1回目は初日に行われた、(株)KADOKAWA取締役会長の角川歴彦(つぐひこ)氏の基調講演の概要を紹介します。ちなみに当講演には主催者発表で1,700人の参加がありました。
演題は『出版業界のトランスフォーメーション~Changing Times, Changing Publishing~』です。
002 氏の考えの眼目は以下のようだと理解しました。
まず、現在の出版界の閉塞状況は戦後確立された「委託制度」「再販制度」および「著作権法」に支えられてきたシステムが制度疲労を起こしてきている現れでないか。
業界内で手をこまぬいているうちに、海外のIT系企業の日本市場への進出を契機に「パラダイムシフト」がこの2~3年の間に起こっている。
具体的には、アップルのiPadの登場、アマゾンの書籍とネットを結合させたビジネスモデルの確立、また取次がIT系の楽天(カナダのkoboを買収)に救済される等の動きがあげられ、その背景に「デジタル化」がある。
このまま流されていると、先行してデジタル化が進み、コンテンツ業者が打撃を受けている音楽業界の現状の二の舞を出版業界も招くということ。

日本の出版業界は、<紙・印刷業>を含めた業界として、また他のデジタルコンテンツを扱う業界とも連携し、今こそ内部からのイノベーションを起こす時であり、具体的な対応として以下の3点を提唱した。
① アマゾンがやってきたサービス(迅速な配本等)は、すべて我が出版業界も実現する努力をする。
② O to O(オンライン・トゥ・オフライン)対応を考え、「人・金・物・情報」が集まる「書店」を「プラットホーム」と位置づけ「ハイブリット書店」化を進める。(アップルのプラットホームであるiTunesストアに対抗)
③ 出版社の権利を確固とするため、図書館に対する電子書籍のレンタルシステムを構築する。(国立国会図書館の一般へのデジタル書籍の配信の動きへの対抗軸)

講演の最後に、氏の構想に賛同しプロジェクトを組む出版社・書店として、紀伊國屋書店・高井社長と講談社・野間社長が壇上に呼ばれ、揃って決意表明がなされました。
大学の専門家や政治家への働きかけも始まっているようですが、個人的には、昨年産業革新機構から多額の資本を得、また多くの出版社や大手印刷会社が連合して立ち上げた「出版デジタル機構」の役割・事業との関連性が疑問として残ります。(Y)