(1)では大手出版社のTOPの問題意識の一端を紹介しましたが、(2)では2年ぶりのフェアを視察して感じた個人的な印象を述べます。
当然のことながら、個人的に興味のあるゾーンを主に歩いているわけで、偏りがあるのは否めません。ご容赦願います。

「電子書籍元年」と言われた2011年と比較し、この2年で明らかに変化したことがあります。
① ある程度コンテンツの電子化が進んだこと、
② 「黒船」と言われた海外勢が日本市場に出そろったこと、
③ ②も影響しフォーマット問題に決着がついたこと、
④ 日本でも「セルフパブリッシング」の具体例(成功例)が出始めたこと、
⑤ 「紙 VS 電子」からPOD(プリント・オン・デマンド)を含めた「書店のハイブリット化」へ関心が移っていること、等です。
以上の点は今回の展示内容、用意されたセミナーのテーマ等で明らかに反映されていました。

①では2012年の「出版デジタル機構」の誕生と、経産省の「コンテンツ緊急電子化事業」(批判も多く聞かれたが)は一定の役割を果たしました。②も後押しとなったと思います。しかしこの貴重な機会に、出版デジタル機構としての出展やセミナーが用意されていない(と思います)のは残念でありまた疑問なところであります。

②ではとりわけアマゾンの動きが注目を浴びていました。セミナーではアマゾン担当者も登場し、「キンドル」サービスの理念や実態の説明が聞けました。各事業者とも対抗軸はアマゾンであり、有効な対抗策を打ち出せなければ、「一人勝ち」を許すことになりかねません。

③は独自フォーマットで日本の電子書籍ビジネスに大きな影響力を持つボイジャーが、積極的にEPUB3関連の制作ツールの発表を行なっている現実がすべてを物語っていると思います。

④の「セルフパブリッシング」とはこれまでの日本にはなかった概念です。「自己出版」と訳され日本での「自費出版」と似ていますが、出版費用を自分で負担するという意味合いではなく、出版社を通さず作者が自力で出版する(プロモーションも)ということのようです。アメリカのアマゾンでの成功例がよく語られましたが、日本でもとうとう登場しました。藤井太洋氏(『Gene Mapper(ジーン・マッパー)』が、Best of Kindle本 2012 の文芸・小説部門でトップを獲得)は時の人でした。

⑤電子書籍を販売する上で誰もが悩むのは「展示の仕方」です。物理的な制約があり、書店におけるリアル本の「平積み」や書店員の工夫を凝らした「見せ方」にはとうていかないません。「紙と電子」両方の品揃えをし、併せてプロモーションをする事の必要性が強く感じられてきました。端末も電子コンテンツも店頭で購入でき、PODマシンも用意する三省堂書店の取り組みが注目されます。
説明不足な点は(3)でしようと思います。(Y)